わりとなんでもどうでもいい

自分と家族の記憶のために記録中@ちぇび

ファッションが教えてくれること

「ファッションが教えてくれる事」
原題「The September Issue」を見ました。

VOGUE編集長率いるVOGUEの9月号を出版するまで
に密着したドキュメントです。


編集長 アナ ウィンター

なかなか面白かった。結構いけすかん女なのかと思って
いたけど、頭や心の中で色々な事を考えてその結論だけで
話をする人みたい。ドキュメントの中でも彼女は必要以上に
愛想よくしないだけだって言われてた。本当そういう
感じ。色々細かく説明したりする事無く、単に自分の
イメージにそぐわないのであれば「そぐわない」と
伝えるのみ。まぁ、最初は誤解されやすいだろうな。


この人の抱える重圧はそれはそれは凄いものだろうと思う。
周りに居るすべてのアーティストに自分の考えを伝え、
それに沿った仕事をしてもらう。でも写真家でもディレクターでも
自分の中にあるアートには妥協できない。
結局自分色を打ち出した仕事にたいして、この編集長が
「はぁ・・・私が欲しいものはこういうものじゃないのに・・・」
ってなる。

彼女はファッションに対してのこだわりよりも、自分の雑誌が
読者に対してどれだけの影響とパンチと好印象を与えられるか
というこだわりの方が強い。
まぁそれは編集者としては当たり前の事だろうけど。


手前にいるグレイス。グレイスは最初はファッションモデルだったが
のちにアナとともに同時期にVOGUEで仕事を始めたディレクターだ。


20年代をテーマにグレイスが監督した写真。他にもステキな写真は
色々あったけれども、グレイス一押しの写真その他がアナの一存で
却下になってしまった。撮っても撮っても却下されればそりゃやる気
がなくなるわ。でもアナとグレイスは旧知の仲、お互いの良い所
悪い所を理解しているので、グレイスも簡単にはあきらめない。
でもアナはどこがどうとはっきり言わず「没」というのみなので、
どうすればいいか途方にくれる・・・そんな感じwww

同じくシエナミラーを表紙のセレブに迎えて撮影した写真が
私の目から見てもどれもイケてないww超有名な写真家がローマで
撮ったのにね。


なんちゅうか・・・どうしてこんなのなの?って思っちゃうけど
超有名な写真家が自分のホーム、ローマで自分の美意識を
前面に打ち出して撮っちゃったもんだから、アナは
「困った。締め切りまで1週間なのに、これ全部使えない、どうしよう」
という表情。でもそういう事は言わない。言ってもしょうがない。
とりあえずあとの1週間で出来るだけの写真を撮る!って事で
グレイスに緊急指令が。


結果、当初はシエナミラー特集みたいな雑誌だったのが、半分は
グレイスが監督したカラーブロッキング?の特集となった。
グレイスはしてやったり。↑の写真がそうなのだが、彼女のセンス
は素晴らしいと私も思う。左に映っているカメラマンはこの
「ファッションが教えてくれること」を撮影していたカメラマン。
この2枚は同時に撮影されたものではなく、別々に撮影した2枚の
写真をつなぎ合わせた物。右側の女性はプロのモデル。

アナはこの写真を見てカメラマンに「ワークアウトする必要があるわね、
お腹のあたり、ジムに通って痩せないとね」と言った。
グレイスはカメラマンからその話を聞いて最初は笑っていたけれど
「その必要はない。あなたはプロのモデルではなく普通の人間。
プロのモデルはこうでないとだめだけど。ワークアウトする必要は
ないわよ」と。
その後写真の加工部門の人に電話して
「彼のお腹を加工しないでね、あれでないと意味がないの。普通の
人とモデルが映っているというコンセプトがいいのよ、絶対
痩せた男の人にしないでね」
ま、確かにそうだよね。だったらプロの男性モデルを使えばいいだけ
の話であって、これはグレイスから瞬時に出たアイデアなんだから。

アナはとても頑固で冷たい鉄の女のように思えるけど、娘が弱点
だと言ったり、テニスがうまくなりたいと言ったり・・・普段は本当に
普通の人。仕事にかけては絶対妥協しない、でないと編集長を
やってる意味がないと感じている人なだけ。

てなわけで、あまり見られない業界の内側を見て、華やかでは
あるけど物凄いプレッシャーと努力の賜物がVOGUEにあるのだなと
感じさせられる映画でした。